4月10日 ゴギ蔵のファイトフィッシング 後編

 昨晩の我が三人部屋は消灯してからも海部川鮎ツアーの話でなかなか静まる事は無かった。そしてようやく静かになったと思えば・・・ぐ〜、ぐ〜、が〜、が〜である。みんな元気にはしゃぎ過ぎて相当疲れていたのであろう。私の場合はのぼせ気味で頭がぼ〜としていたせいか、なかなか寝付けなかったが知らぬ間に深い眠りに落ちて行った様だ・・・。
 別段目覚ましも鳴った訳では無く、はっと!目を開くと外はすでに明るくなっている。時刻は・・・05時40分である。07時からの朝食までにはまだ少々時間がある。となれば目の前の高津川本流が気になるのだ!歯磨き、着替えを済まし、ぐっすりと眠っている二人を置き去りにしテンカラ竿を握り締めたのだ!・・・というか起きる気配はありませんでした。
朝の原田屋にて・・・
 川幅の広い本流でのテンカラは経験が少なく何処を攻めれば良いのかしばし戸惑ったが、結局は魚が居そうなポイント、出そうなポイントを狙えば良い!普段通りの流れを攻めることにした。もちろん他に釣り人など無く朝食の時間までの短時間で広範囲を攻めなければならない・・・この中のどこかに渓魚が潜んでいるのである。
この流れの底石は比較的綺麗であった。もしかして?・・・大当たりでした!
 瀬の際や流れ込みの際、反転流など出やすいポイントを手短に釣って上がるも出て来るのは白ハエばかりである。それでも釣れないよりはましであるが・・・
 白ハエを6匹ほど釣り、比較的川底の綺麗なポイントに目を奪われる。水深もあり大石が点在している・・・この石陰にヤマメが居たりして・・・などと思いながらも立ち位置を決め合わせと同時に引き抜くつもりで毛針を落とす。
 石の頭を毛針が通過したとき水面が盛り上がったのを確認したが当たりは無い・・・そこそこ大きな盛り上がりなので水が湧いて来たのかな?などとそのときは思ったがそこから少し上へ毛針を打った瞬間ラインが一瞬、・・・止まったのである。別段引き込まれる訳でもなく、もちろん走る訳でもない。これが片山名人の言われる「鯉がふを食った感じ」なのかも知れない。
 素早く合わせを入れると竿に重圧がのし掛かる!よし!このまま一気に抜!・・・あれ?全く持って水中から出てこないのである・・・・・ぎら〜ん!と、ラインが激走!もしかしてマス?そこそこ大きい銀影が私を興奮させたのだ!来た、来た、来た〜!!
 いつもであれば首振りによる針外れを心配しながらのやり取りになるが今日はそんなことはノープロブレムである!なぜなら、フックサイズを#12に固定したことによりガッチリ、シッカリ、キッチリフックキングが可能になったからである。魚の喰いについても片山さんの言う通りでこのサイズで何ら問題が無いのである。
 時折、石の間に逃げ込もうとする獲物をなだめながらも数分間の格闘・・・竿は天を刺しているがラインの先はなかなか水面に出てこないのである!そして、ゼロ釣りのごとく獲物の体力を消耗させ、ランディング直前の大暴れを防止し無事タモに納まったのは幅広ヤマメであった!06時30分の出来事であった。
ナイスファイトで朝から熱くなる!!
28センチ(片山名人現認)
 獲物を大事に舟に仕舞い込み朝食のためその場を後に・・・道路には散歩中?居なくなった私を捜索中?のイダ蔵さんと和渓さんが・・・釣れた?・・・舟の中の魚を見てイダ蔵さんはビックリであった!いいな〜テンカラでこんなの釣って・・・。早起きは三文の得!まさに朝飯前である!
 一仕事済ませた後は腹が減る!サイズも測らぬままに舟を投錨し食堂へと駆け込み、腹へ飯もかけ込んだのである。白ハエのせいか何となく手が生臭い・・・・・。
 食事が済めば朝のミーティングである!またもや片山名人の毒舌が面白く誰も釣りに出かけようとはしないのだ。別段じゃんけんに負けた訳でも無いがイダ蔵さんが皆にコーヒーを入れてくれた。くつろぎ、笑い、これもまた至福の時なのだ・・・。
さあ出発だ!しかし、記念撮影も忘れない
 再び山を越えた我々の一日は川虫採りから始まるのである。昨日、名人が発見したポイントへと向かうが・・・一人だけなかなか川原に下りてこないのである。ぽかぽか陽気でそこには複数の蛇ちゃんがにょろにょろしている・・・それが原因である。片山名人がいきなり棒を手にしヘビに近寄った。ヘビを追い払い、恐れるイダ蔵さんを救うためだとその場の誰もが思いきや・・・一気に棒でヘビを空中に・・・それもイダ蔵さんの目の前にまで跳ね上げたのだ!!ぎゃ〜!!叫び声とともにイダ蔵さんの顔が引きつったのだ!!!恐るべし片山名人!!六車氏曰く「彼に弱みは見せるべからず!」ゴギ蔵、肝に命じました!
早く下りておいで、かまないから・・とヘビが呼んでいる!
 その後もイダ蔵さんは川原に下りる事が出来ないままに道路から石を投げ続け障害を取り除くべく悪戦苦闘!!よって、仕方なく私が蛇を追っ払い事なきを得たのであった。
ようやく下りて来たイダ蔵さん!川の中ならヘビは追って来ないのだ!ふっ〜!
 その間も黙々と虫を採るのは片山さんと六車さんである。私も面白いので石を持ち上げ竹製のピンセットでヒラタを摘むのであった・・・そして、名人達のゼロが始まったのである。本日は本流に的を絞ってのファイトフィッシングとなったのだ。もちん、お邪魔な取り巻きは無く正午までの時間ぎりぎりを思う存分堪能して頂いたのである。
イダ蔵さんのLLテンカラも完成しつつあるのだ!
 一方、私とイダ蔵さんはテンカラ竿にレベルラインを張り修行を始めたのである。イダ蔵さんはLLテンカラを得意としているが、正直私は風が出るとダメなのである。しかし昨日の名人は向かい風にも関わらずラインを生き物の様に操っていたのだ・・・何か理由が・・・着水時のラインのブレもなかったし・・・。
 それどころか今日の私はラインすら満足に伸ばすことが出来ないのである・・・全ては風か?いやそうでは無い!イダ蔵さんはこの風の中でも上手く飛ばしているのである・・・なんだ?・・・仕掛けを見つめ直しある結論に至ったのである!目印は要らない!これがあるが為にラインが死んでしまうのだ!よって躊躇いも無く目印を除去し無印テンカラを開始したのである!
 その呪縛が解き放たれたと同時に、なんと!ラインが伸びるのである!ピックアップがダイレクトに毛針に伝わり程好い水圧が竿にしなりをもたらすのである。そしてその反動を押し出すだけで毛針が飛んでいくのである!向かい風もさほど気にならない!これだ!・・・リズミカルに毛針を打ち込む・・・ドリフト時のなんとも言えない軽さが心地よい・・・こうなればおそらくもうテーパーに戻ることは無いであろう。
 釣れようが、釣れまいが今はラインが伸びる事が面白い!・・・イダ蔵1匹、ゴギ蔵1匹にて終了し昼の準備に取り掛かったのである。(机のセットと湯沸かしだけですけど・・・・)
本流は水が多くゼロ、テンカラともに難を極める
 時刻は12時過ぎ!我々を祝福するかのように満開になった桜の木の下にて昼食と成ったのだ。もちろんここでも片山さんのお話を楽しませてもらったのである。六車さんからは川へのアプローチについて指摘を受けたりと、色々と勉強させて頂いたのである。竿を持って魚を追うばかりでなく、こうやって釣りについて話をするのもそれと同じく楽しいものであった。楽しい時間は何時もよりもより早く流れて行くものである・・・。
 そして間もなくタイムアップ!2日間の至福の時が幕を閉じたのであった。
スーパーフィッシュゲッター?六車氏の一枚!
目つぶってしまった!
師を囲んでの一枚!!桜も満開!!


 釣行とは家を出て、家に帰るまでの一連の流れを全て含めたものである。それは釣りと言う目的に附随した部分の一つ一つにも意味があり楽しさがあると言う事である。今回、片山悦二さんとご一緒させて頂き私は特にそのように感じた。
 私の目に映った片山悦二さんは釣行に関わる全てのものから多くの楽しさを自然と見つけ出されており、そしてそれを思う存分楽しんでいらっしゃるように感じたのだ。「釣れても、釣れなくても釣りは楽しい」その言葉の意味が何となく私もわかりかけて来た。
 日常の中にもたくさんの楽しさが隠れているのかも知れない・・・我々は忙しいと言い訳をし、それを見つける努力を怠っているのかも知れない・・・人生には心のゆとりが必要である、例え急いで歩くにせよ好奇心を持ち、目を大きく見開いて進むべし!・・・それに気づかせて頂いた楽しい休日でした。
 片山さん、六車さん有難う御座いました。次にお会いするのは何処でしょうね!

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